アダストリアは豊島と協業し、身体障害者や入院服を着用する機会が多い人向けのアパレル製品を作るプロジェクトを行っている。豊島の3D・CGデザインシステム「バーチャルクロージング」を活用して製作する「プレイ・ファッション!フォー・オール」だ。グッチ 服作成した服は、アダストリアグループの公式オンラインストア「ドットエスティ」での販売を検討している。
親の介護がきっかけ
この取り組みは、アダストリア社内の事業提案プロジェクトから始まった。ダイバーシティー(人材の多様性)視点を取り入れたインクルーシブファッションサービスだ。きっかけは、親の介護を通じて「体の不自由な人や寝たきりの人でも、ファッションを楽しめる服を作りたい」と考えた一人の提案。メインテーマは「一人ひとりの毎日に『もっと楽しい』選択肢を」。この実現に効果的な方法として、豊島がバーチャルクロージングの活用を勧めた。
服作りに向けては、アダストリアグループの障害者雇用の促進と、総合的な業務サポートを提供するアダストリア・ゼネラルサポート(AGS)の各事業所から参加者を募った。コロナ下でも着用者との3D・CGを介したリモートミーティングを通じ、細かなニーズを聞き取りながら進行した。AGSの各事業所(総従業員数約200人)でヒアリングも行った。車椅子の利用者向けの服は、シャツの袖の内側を合成皮革に切り替えることで、車輪を回す際に付く汚れを気にせず着用できるデザイン。細い脚に適度にフィットして着脱が容易なデニムパンツは、伸縮率や伸縮回復力の高い、豊島オリジナルの綿ストレッチ生地「ワンダーシェイプ」を生かした。
身長が約110センチで、肩幅やウエストが大きい男性には、体の15カ所の部位を測ってアバターを作成、これを基にジャケットとパンツを仕立てた。個人の身体データを取り込み、様々な角度からパターンや色などのデザインを検証し、一人ひとりに合わせたデザインができる。
入院服はズボンの履き口の左右にひもを取り付けて上げ下ろししやすくした。裾口にはゴムを施し、まくった時に下に落ちない仕様。ポリエステル・綿の薄地の楊柳を使い、全体にゆったりとしたシルエット。共生地の羽織り物との組み合わせで温度調整も可能。
諦めていたことが形に
参加者は「諦めていたことを形にしてもらえて率直にうれしい。どんなファッションをしたいか改めて考えるきっかけになった」としている。発案者でアダストリア・マーケティング本部の坂野世里奈マネージャーは、「ECの充実で誰でも物が買える社会であるように見えるが、実際には障害者、入院や介護が必要な人などがファッションを楽しむにはまだまだ不十分。全ての人がファッションを楽しめる社会を作りたい」と話す。
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